うつ病の症状・治療
1. うつ病とは? ~症状と特徴について~
うつ病とはどんな病気か?
うつ病は、日本人の15人に1人がかかる気分や思考、行動に影響を与えるこころの病気です。多くの人が「落ち込んでいる」「気分が重い」と感じることがありますが、うつ病の場合、この状態が数週間から数ヶ月、長期間続くことが特徴です。気分が沈み、エネルギーがなくなり、毎日の生活がつらく感じるようになります。うつ病が続くと、学校の勉強や友達との関係、趣味や家族との時間など、普段楽しんでいたことが楽しめなくなり、生活全般に大きな影響を与えます。
うつ病の主な症状
抑うつ気分
最も特徴的なのが「気分の落ち込み」です。普段楽しんでいたことにも興味が持てなくなり、常に悲しい、無力感、空虚感を感じます。朝起きたときから気分が重く、何もしたくないと感じることが多くなります。
興味・喜びの喪失
抑うつ気分と並んで特徴的なのが「興味・喜びの喪失」です。何をしても楽しめない、やる気が出ない状態です。好きな音楽を聴くことや、友達と遊ぶことなど今まで楽しめていたことに楽しさを感じなくなります。
疲れやすい・体がだるい
うつ病では、体力がなくなり、どんなに休んでも疲れが取れず、だるさを感じ続けます。会社での仕事や学校での勉強などにも集中できなくなります。
食欲や睡眠の変化
うつ病では、食欲が減ったり、過剰に食べてしまったりすることがあります。さらに、睡眠の質が悪くなり、眠れなかったり、逆に過眠になったりします。
集中力や決断力の低下
思考がぼんやりし、物事に集中できなくなることがあります。勉強や仕事でミスが増え、決断を下すのが難しくなることもあります。
自責の念や罪悪感
自分を責める気持ちが強くなります。「自分はダメな人間だ」「どうせうまくいかない」と思い込み、自己評価が低くなります。
自殺念慮
自殺念慮とは、自分の命を絶ちたいという気持ちのことです。このような考えが浮かび、頭から離れない場合、すぐに専門家に相談することが必要です。
上記の症状がすべて揃うと、うつ病がかなりひどくなっている場合が多いです。早めに気づいて治療を受けることが大切ですので、少しでも不調を感じたら早めに病院を受診することをおすすめします。
また、うつ病は最初に身体の症状が現れることがよくあります。うつ病と診断される人の多くが、心療内科や精神科に行く前に、体の具合が悪いと感じ、内科などを受診することも多いです。ストレスがかかると、身体にいろいろな不調が出ることがあります。たとえば、風邪をひきやすくなる、頭が痛い、めまいがする、肩がこる、体がだるいなどです。これらは自分でもわかりやすいので、内科などを受診する事が多くなります。
うつ病は自分ではなかなか気づきにくい事も多い病気です。だから、家族や友達、学校や職場の人が気づいて、治療を受けるように促すことが大切です。周りの人が「病院に行こう」と声をかけることが、治療を始めるきっかけになる事も多いです。
2. うつ病の原因
うつ病の主な原因
うつ病が発症する原因は一つではなく、さまざまな要因が関係しています。きっかけやストレスが必ずしも原因ではない場合もあります。主な原因には以下があります。
精神的なストレス
学校でのトラブルや家庭の問題、失恋、いじめ、進路に対する不安など、ストレスがうつ病の引き金になることがあります。
生活習慣の乱れ(睡眠不足、過労)
不規則な生活や身体の健康状態。過度なプレッシャー、人間関係の問題なども、うつ病の発症に関係することがあります。
遺伝的要因
家族にうつ病の人がいる場合、遺伝的にうつ病になりやすい傾向があります。しかし、必ずしも遺伝だけが原因ではなく、環境や生活習慣も大きく影響します。
脳の化学的なバランスの乱れ
脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスが崩れると、うつ病が発症しやすくなることがわかっています。また、ホルモンバランスの乱れや脳の病気など身体の病気が原因でうつ病になる事もあります。
3. うつ病の治療方法 ~薬物療法と心理療法~
うつ病の治療法
環境調整
まずはゆっくりと休養を取ることが重要です。ストレスとなっていることが明確な場合はストレスが軽くなるよう周囲の環境を整えることも重要です。(これを専門用語で環境調整といいます)。症状が重い場合は休職・休学なども検討する必要があるかもしれません。
薬物療法
うつ病が進行すると、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスが崩れます。薬物療法は、このバランスを改善するために使われる治療法です。軽症のうつ病では必ずしも必要ではない場合もありますが、抗うつ薬は、脳内の化学物質を調整し、気分を良くしたり、元気を取り戻す手助けをします。抗うつ薬の効果が期待できるまでには、最低でも2週間程度かかります。また、最初に内服する量と効果が期待できる量は異なり、1−2週間ごとに副作用などにも注意しながら増やしていきます。また抗うつ薬に加え、睡眠の改善のため睡眠薬や不安の改善の為、抗不安薬なども合わせて内服する場合もあります。 薬には多くの種類があり、それぞれ効果や副作用も異なります。その人に合わせてご提案させていただきますので診察室でご相談下さい。
心理療法
心理療法としては主なものは認知行動療法があります。認知とは「ものをどう受け取るか」という思考のクセのことで、このクセに気づき、周りの出来事の受け取り方や行動を変える事で、ストレスを軽減させる治療法です。
これらの治療法を組み合わせて行うことで、うつ病の症状を改善し、回復への道をサポートすることができます。治療は時間がかかることもありますが、焦らずに続けることが大切です。
4. 料金
当院は診断書等を除いて保険診療になります。料金の目安は初診の場合にはおおむね3000円から5000円、再診の場合には1500円から2500円程になることが多いです。料金の幅は血液検査や心理検査の有無によって変動します。また別途診断書を発行した場合別途料金がかかります。また院外薬局での調剤・お薬代が別途かかります。
院外薬局での調剤・お薬代はお薬の内容によって大きく変わりますが、2週間分で平均1000円から2000円程度が目安となります。
詳しくは料金についてをご参照ください。
5.よくある質問
私が診察の中でよく質問を受けることについてここで解説していこうと思います。
・うつ病が良くなったら抗うつ薬はやめてもいいですか。
うつ病は再発が多い疾患であり、症状が良くなり治ったと感じるようになった後少なくとも半年、すでに再発を経験して2回以上うつ病になった方は2年以上は内服を続けたほうがいいです。回復後すぐに抗うつ薬をやめると、約半数が3~6か月以内に再度うつの症状が出ると言われています。そのため、うつ病が良くなった後もある程度の期間は抗うつ薬を飲み続けることをお勧めしています。
・薬はできるだけ飲みたくないですけど、それでも治せますか。
軽症のうつ病に関しては抗うつ薬などの薬物療法以外の方法での治療も十分効果を見込めます。中等症・重症のうつ病に関しては副作用などの問題がなければ抗うつ薬などの薬物療法を含めてご提案させていただく事が多いです。しかし、患者様に強制して薬を処方することは致しませんし、患者様の治療へのご希望には添いつつご提案させていただきますのでまずは診察室でご相談いただければ有り難いです。
参考:日本うつ病学会治療ガイドラインⅡ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016
・身体の病気で起こるうつ病とはどのようなものがありますか。
うつ病の原因となりうる身体の病気は非常にたくさんの種類があります。
一例を挙げますと
- 脳出血や脳梗塞・脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの脳の病気
- 脳炎や髄膜炎などの感染症
- 全身性エリテマトーデスや多発性硬化症などの膠原病や自己免疫疾患
- ビタミンB1欠乏症やビタミンB12欠乏症などのビタミン欠乏症
- 甲状腺や副甲状腺、下垂体、副腎に関するホルモン障害
などです。ホルモン異常やビタミン欠乏の可能性がある場合は当院では血液検査をお願いしています。また脳の病気が疑われる場合は他院への紹介し頭部画像検査などの検査をお願いする事もあります。
6.終わりに
うつ病は誰でもなる可能性がある病気です。しかし、適切な治療を受け、生活習慣を見直すことで、回復することができます。自分の気持ちや体調に正直になり、無理せず、周りのサポートを得ることが大切です。
国分寺市の国民健康保険に関する報告書では、国分寺市は精神疾患の医療費が東京都の中でも高い傾向にあることも報告されており、症状がひどくなる前に受診することが大事になります。
ポラリスこころのクリニック国分寺では、うつ病に対する治療をサポートしています。あなたがより良い生活を送るために、一緒に取り組んでいきましょう。症状がつらいと感じたときには、いつでもご相談ください。
院長 萩原将孝
日本精神神経学会認定精神科専門医
厚生労働省精神保健指定医
日本医師会認定産業医